
パパ・ママ
病院にわざわざ行ったのに、検査をしてもらえなかった。
「明日また来てください」と言われた。
そんな経験はありませんか?
「今回の風邪の原因をはっきりさせてほしい」と心の中で願っていても、実際には検査をしてもらえず、モヤモヤしてしまう親御さんは多いと思います。
この記事では、小児科医がどのような意向で「検査をする・しない」を判断しているのかを、元看護師の視点から丁寧にお伝えします。
なぜ検査をしなかったの?
小児科に風邪で受診したとき、検査をすることもあれば、しないこともありますよね。
医師が「あえて検査をしない」のには、大きく2つの理由があります。
①検査が子どもにとって大きな負担になるため
感染症の検査の多くは、子どもにとって強い苦痛を伴います。
体調が悪いときに泣いたり暴れたりすると、それだけで体力を消耗し、病状を悪化させてしまう原因にもなりかねません。

その他には【便検査】【胸部レントゲン】などがあります。
【補足】感染症ではありませんが、5日以上高熱が続き、目が赤くなる、体に発疹が出るなどの症状がある場合は「川崎病」という病気の可能性を考えて、血液検査を行うことがあります。
②多くの風邪には「特効薬」がないため
子どもの風邪の80〜90%は「ウイルス」が原因ですが、そのほとんどにはウイルスそのものを退治する薬(特効薬)がありません。
そのため、病院で出すお薬はウイルスを退治するためではなく、今出ているツラい症状をやわらげるためのもの(これを対症療法といいます)が中心になります。
つまり、「検査をして病名がハッキリわかったとしても、治療(出す薬など)方法は変わらない」ということです。そのため医師は、子どもの負担を考えて検査を行なわないことがあります。
一方で、「検査結果で治療方法が変わる病気」が疑われる場合は、検査を行います。例えば、次のような病気です。
🦠抗菌薬(抗生物質)が効く「細菌」
・溶連菌感染症
・マイコプラズマ肺炎
・百日咳
🦠専用の抗ウイルス薬がある「ウイルス」
・インフルエンザ
複数のウイルスが一度にわかる検査がある?
大きな病院には、1回で何十種類もの菌やウイルスを特定できる高性能な機械がある場所もありますが、これは「入院が必要な重症な子」などに国のアドバイスで制限されています。一般的な風邪の段階では使わないのが通常のルールです。
医師はどんな情報をもとに検査を考えているの?
では、医師はどのようなことをもとに、検査をするかどうかを考えているのでしょうか?
診察でわかる「体のサイン」
医師は、お子さんの顔色、元気さ、のどの腫れ方、胸やお腹の音、そして体に発疹(ぷつぷつ)が出ていないかなど、「診察(問診・視診・聴診・触診)」から得られるたくさんの情報をプロの目でしっかり確認しています。
これらをもとに診察した結果、以下のようなケースでは、検査をしなくても診断がついたり、お家でのケア方針が決まったりします。
「見た目」で診断がつくとき
以下の風邪は、特徴的な「見た目」が出るため、基本的には検査をせず診察だけで診断します。
- 手足口病:手、足、口を中心に少し硬めのポツッとしたぷつぷつ
- ヘルパンギーナ:のどの奥の水ぶくれ(発熱2~3日後)
- 突発性発疹:全身に出るぷつぷつ(熱が下がったあと)
- 水ぼうそう(水痘):強いかゆみを伴う、全身の赤いぷつぷつ→水ぶくれ
- プール熱(咽頭結膜熱):目の赤み
まわりに同じ風邪の人がいて、症状が一致するとき(みなし陽性)
検査をしなくても、家族などの感染状況や本人の症状から「この病気で間違いない(陽性)」と医師が判断することを「みなし陽性」といいます。
🏠我が家の体験談
家族がインフルエンザで療養している最中に、子どもが発熱したことがありました。その際は、子ども自身に検査はせず、状況から「みなし陽性」としてスムーズにインフルエンザのお薬を出してもらうことができました。
普通の「風邪」と判断できるとき
診察で、「検査結果によって出すお薬や家でのケア方法が変わる病気」が隠れていないと判断できれば、それ以上の検査はせずにお薬(対症療法)を出して様子を見ます。
周りの「流行状況」
園や学校、地域で特定の流行状況は、医師にとって大切な手がかりになります。
そのため、周りの流行に合わせて「検査をした方が安心だな」と医師が判断して検査を行うケースもあります。
🏠我が家の体験談
子どもが溶連菌にかかったとき、溶連菌ではあまり出ないはずの「咳」が出ていました。通常、咳があると「普通の風邪かな?」と思われて、検査をしないこともあります。しかし地域で「溶連菌感染症の流行警報」が出ていたため、医師がそれを考慮して検査をしてくれました。

流行状況は、検査をするかどうかを決める重要な情報です。
受診する前に、園や学校などで流行っている風邪がないかを事前に確認しておくとスムーズですよ。
発熱からの「時間」
インフルエンザや新型コロナなどは、発熱してから12時間〜24時間ほど経たないと、体の中でウイルスが十分に増えません。
熱が出てすぐに検査をしても、本当はかかっているのに「陰性」と間違った結果が出てしまうため、あえて「明日まで様子を見ましょう」と再受診をすすめられることがあります。
そのため、受診する前にまずは電話で「いつから発熱しているか」を伝え、検査ができるタイミングかどうかを確認してから向かうのが確実ですよ。
一番大切なのは検査結果ではありません。発熱してすぐであっても、「水分がまったくとれない」「あきらかにぐったりしている」など緊急性が高い場合は、時間の経過を待たずにすぐに受診してください。
たとえ検査対象の感染症が疑われる場合でも、症状が軽くてお家で様子を見守れるときは、あえて検査をしないこともよくあります。
反対に、「どうしても検査をしてほしい!」という親御さんの強い希望がある場合は、医師が必要性を判断したうえで、検査を行うこともあります。
検査の有無に迷ったら、ぜひお医者さんに「心配な気持ち」を素直に相談してみてくださいね。
特効薬がないのに「あえて検査をする」ケース
基本は検査をしないウイルスでも、あえて検査をすることがあります。
その理由は、医師が「今後の見通し」を予測し、重症化を防ぐための先回りの対策を打つためです。
例えば、以下のような病気は小さいお子さんは悪化しやすく、注意が必要です。
- 【ヒトメタニューモウイルス】【RSウイルス】
数日続く発熱、咳、鼻水が主な症状。激しい咳で呼吸が「ゼイゼイ・ヒューヒュー」と苦しそうになり、気管支炎や肺炎を起こしやすい。 - 【アデノウイルス(プール熱・流行性角結膜炎)】
39〜40度の高熱、のどの痛み、目の赤みや目やにが主な症状。発熱が5日〜1週間以上続くことも。 - 【新型コロナウイルス】
発熱、のどの痛み、咳などが主な症状。40度以上の高熱になることもある。
あらかじめ原因がわかっていれば、医師は「この先のトラブルを見越したお薬の処方」や「早めの再受診のスケジュール提案」など、具体的な治療方針を組むことができます。
また、アデノウイルスや新型コロナなど、一部の感染症には法律(学校保健法)によって「出席停止の期間」が定められています。
あらかじめ検査をして原因を特定しておくことは、「まわりの子への感染を防ぐ」だけでなく、「子ども自身の体をしっかり休ませて重症化を防ぐための、正しいお休み期間」をハッキリさせるためにも大切です。
出席停止の期間は病気によって異なります。詳しい基準やその他の病気については、日本小児科学会「学校感染症と出席停止期間の基準」の公式ページに分かりやすくまとめられています。
検査を受けるときの子どものサポート
もし検査を受けることになったら、親御さんは3つのポイントを意識してサポートしてあげてください。
①体をやさしく「がっちり」固定してあげる
小さいお子さんの場合、抱っこをしたまま検査をすることが多いです。そのとき、つい心配で顔をのぞき込みたくなりますが、お子さんの頭や体をしっかり支えることに集中してあげてください。
親御さんがブレずにドシッと構えてくれている方が、検査が安全に一瞬で終わり、結果的にお子さんの負担を一番減らすことができます。
②「嘘」や「無理強い」のない声かけをしてあげる
「ぜんぜん痛くないよ」などの嘘や、「お兄ちゃんだからできるよね」といった無理強いの表現は避けましょう。あとで「だまされた」と感じたり、「できないって言ったら怒られるのかな…」とお子さんを心理的に追いつめてしまう原因になります。
大人にとっては一瞬のことでも、子どもにとっては大きな恐怖です。
検査のときにそばにいられるときは、「怖いよね。ママがそばにいるよ。」「痛い時はママの手をギューっとにぎって良いよ。」と味方になってあげましょう。
別室で待機するときは「ママはあそこのお部屋で待ってるからね。終わったらギューしようね。」など、お子さんが安心できる声かけをして、終わった後の楽しみを作るのも良いかもしれませんね。
③どんな結果でも、褒めてあげる
たとえ大泣きしてしまっても、暴れてしまっても、終わったあとは「痛かったね。よく頑張ったね。」と思いを受け止め、頑張ったことをたくさん褒めてあげてください。
ストレスボールで痛みが軽くなる?
「ストレスボール」は、ゴムやスポンジ、ビーズなどが入ったやわらかいボールです。これを検査中にギュッと握らせてあげることで、痛みに意識が向きにくくなり、痛みをやわらげる効果があるとされています。
もしお家に、お子さんが握りやすいボールがあれば、お守りがわりに持って行ってみるのもおすすめですよ。
価格:999円 |
まとめ
- 小児科で検査をしないのは、子どもの負担や治療方針を考えた結果です。
- 子どもの風邪では、症状・流行状況・発熱からの時間などをもとに、検査をする・しないを判断します。
- 特効薬がない風邪では検査をしないこともありますが、治療や今後の見通しを考えて、検査を行うケースもあります。
- 検査を受ける時は、子どもが安心できるようにサポートしてあげましょう。
小児科で検査をしないのは「手間を省くため」ではありません。
子どもへの負担と、本当に検査が必要かどうかを考えて決められています。
検査をする・しないには、それぞれ理由があります。
その理由を知っておくことで、受診するときの不安も少しやわらぎ、医師の説明もより理解しやすくなるはずです。
⚠️本記事は、小児科で一般的に行われている考え方を、文献やガイドライン、元看護師としての経験をもとにわかりやすくまとめたものです。実際の診療では、お子さんの症状や医師の判断によって対応は異なります。
【参考文献】
- 草川功『そんなときどうする?子どもの病気SOS』、マガジンハウス、2017年
- 野村さちい『子どもの病気・救急ぜったい「これ知ってて!」』、日東書院、2024年
- 吉川隆樹『安心・安全 子ども免疫ガイド 2強い免疫・弱い免疫』、フレーベル館、2022年
- 岡本光宏『小さな異変もこぼさず拾える!子どもの診かた、気づきかた』、じほう、2021年
- 竹綱庸仁『行列のできる子ども健康相談室0〜10歳児の病気とケガのおうちケア』、KADOKAWA、2023年
- 原田香奈・相吉恵・祖父江由紀子『医療を受ける子どもへの上手なかかわり方 第2版』、日本看護協会出版会、2018年
- 株式会社LSIメディエンス「呼吸器病原体マルチスクリーニング」https://data.medience.co.jp/guide/guide-15070017.html
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html
- 日本小児科学会「学校感染症と出席停止期間の基準」https://www.jpeds.or.jp/general/guidelines/post-153330.html


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